金貨の品位と色調

このエントリーをはてなブックマークに追加
Check

金貨の歴史はすなわち「貨幣の歴史」である。世界初のコインは、紀元前7世紀の小アジア――リュディアにおいて始まったからで、これは金と銀の自然合金によるエレクトルム貨だった。

エレクトルムは大体のところ、金が3分の2、銀が3分の1程度の合金で、この金属はのちカルタゴのスターテル貨にも用いられた。銀の表面に出ている度合いにより、茶色っぽく変色しているコインも見かける。

日本の金貨は「大判」がその代名詞のような存在だが、その金品位はエレクトルム貨と似たり寄ったりで、元禄大判などは1000分の521という低い品位であった。また幕末の万延大判ともなると、1000分の344と主客転倒してしまっていた。だから濃茶色の銀の錆が浮かんできそうだ。

中世のヨーロッパに――1284年のヴェネツィアに登場したデュカット金貨は、1000分の986という純金に近い高品位であったことから、交易決済の貨幣としての信用をたちまち確固たるものとした。

この花を描いたタイプは、イタリア語の「花」からフロリーノと呼ばれ、やはり信用を得たのだった。

高い金品位が信用の対象と考えられると、1000分の999–すなわち純金のゼッキーノ金貨、あるいはドッピア金貨が登場する。これらは不純物がほとんどないことから、現在手にしても製造されたころの輝きを有している。

イギリスのポンド・スターリング制は、金貨の品位が1000分の917で4世紀以上にわたり固定された。これはこの国も通貨制度の信頼の礎となったのである。だからエリザベス1世治世下での、1560年ころの1/2ポンド金貨の品位も、1980年に製造が再開されたエリザベス2世の5ポンド金貨も、同じスタンダードで発行されているのだ。

イギリスの支配下にはいったエジプトでは、19世紀中期から500キルシュという大型金貨を発行した。ところがこのシリーズの品位は、1000分の875とやや低かった。けれど量目が42,72gもあり、金の純分ではイギリスの5ポンド金貨を凌いでいた。

そのエジプトで興味深いのは、20世紀に入ってのファウド王の金貨で、これには残りの分――1000分の125が銀のものと銅のものが存在し、後者は明らかに赤っぽい色調を帯びている。

 

フランスはナポレオン・ボナパルトが権力を握ると、貨幣制度を全面的に改革し、10進法の採用に踏み切った。100フラン金貨が32.2581gとなり、これはナポレオン3世の治世下においてのフランスのコインの基本と定められ、同時にイタリア、スイス、スペイン、ロシア、ブルガリア、ベネズエラ、リヒテンシュタインなどに影響を及ぼした。

銀貨の場合は1000分の600以下の純度だと、日本など湿度の高い地域での梅雨時に緑青が発生する。しかしながらさすがに金貨だと1000分の500という低品位の、ケイマン諸島あたりの近年発行金貨でも変色するというケースに遭遇していない。まだ経年していないからかもしれないが、そのあたりはこの貴金属の特性によるもの、と考えてよいだろう。

ただし劣悪な条件下で長い年月にわたり保管したり、薬品などにより化学変化が表面に生じたときは、例外も起こりうることを記しておきたい。

また合成樹脂製のケースなどに保管したらどうなるか、まだそれによる長期の保存の是非が実証されていないため、ここで断言することは不可能である。

近年にはコレクター目当てのコインが多く発行されているが、そうした中には金品位が驚くほど低いものが存在する。金品位が1000分の500で統一されているならともかく、これは917であれは500といった具合だから始末が悪い。

そうした低品位金貨を発行している国は、バルバドス、ベリーズ、バハマ諸島、ケイマン諸島、カナダ、ギアナ、ハイティ、マン島、それにヴァージン諸島といったところだ。

マン島などはクラウン金貨すべてが、1000分の375でしかなく、これは9カラットでしかない。金品位1000分の500は12カラット、1000分の584は14カラットに相当する。こうした低品位の金貨が将来どう変化してしまうのか、私たちもデータ不足で全く想像がつかない。金貨だから大丈夫だと思っているが――。

カルタゴ3スターテル・エレクトルム貨 B.C 260年 金と銀の自然合金のエレクトルムは最初の貨幣以来広く親しまれた・直径19㎜量目7,35グラム

←カルタゴ3スターテル・エレクトルム貨 B.C260年直径19㎜ 量目7,35グラムカルタゴ3スターテル・エレクトルム貨 裏

金と銀の自然合金のエレクトルムは最初の貨幣以来広く親しまれた

 

カルタゴ3スターテル・エレクトルム貨 裏 →

 

 

 

 

 

 

イギリス 1 2ポンド金貨 エリザベス1世 第2次シリーズ 1560 61 5.65gしっかりした肖像が若き日の女王の面影を教に伝える直径31ミリ
←イギリス 1/2ポンド金貨 エリザベス1世 第2次シリーズ (1560ー61) 5.65g
しっかりした肖像が若き日の女王の面影を教に伝える直径31ミリ

イギリス 5ポンド銀貨 1981年 エリザベス2世 1000分の917というスタンダードが4000年以上変わっていない 直径35㎜ 量目39.947guramu

↓イギリス 5ポンド銀貨 1981年 エリザベス2世
直径35㎜ 量目39
1000分の917というスタンダードが4000年以上変わっていない 直径35㎜ 量目39

2013.10.17|貨幣の基礎知識 貨幣の歴史

コメント一覧

コメントはありません。

この記事にコメント

*

トラックバックURL