ハンガリー10ドュカット金貨
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イギリスの貨幣史上に目立つのは、1817年のソブリン金貨の裏面に見られる〈セント=ジョージの龍退治〉の図である。
これはジョージ3世の治世下から、ヴィクトリア、エドワード7世、ジョージ5世、ジョージ6世そしてエリザベス2世の治世下で用いられ続けた。
このデザインを最初に採り上げたのは、ベネデット・ピスタルッチでイタリアから1815年に王立造幣廠にやってくると直ぐに主任刻印師としてトーマス・ワイオンを継承した。そして17年のソヴリン金貨から、素晴らしいセント=ジョージの龍退治を登場させた。これは極めて優れていたことで、実に1992年まで使用され続けたのであった。
ところがこのテーマは、ピスタルッチのオリジナルではない。
中世の十字軍が聖地へ遠征したときの、騎士たちの守護神だったのだ。
ヨーロッパ社会で広く知られており、龍はイスラム教徒を意味したのだろう。
やがて1600年代に入ると、主として大型銀貨にそれが用いられ始めた。
マンスフェルト・ヒンターフォルトで、1603年からターレル銀貨が発行されたのだ。
HINTERFORTだから「隠し砦」だろう。ここでは4ターレルという超大型銀貨まで存在した。
本家のマンスフェルトでも、1604年から30年までのあいだに、実に19種も発行された。
ヒンターフォルトの12種を超える。ここでも4ターレル銀貨までが見られた。
また金貨も存在する。
マンスフェルト系では他にも、アルテン、ボンステート、そしてアイズレーベンなどに1から2ターレル銀貨があった。
マンスフェルト系以外では、ザクセンで1671年と78年に、ターレル銀貨が発行された。
これはマンスフェルト系のコインよりも、遥かに出来栄えがよい。
やはり刻印師の技工の差と言えるだろう。
そうしたなかでザクセンと並んで出色の出来を示しているのが、ハンガリーの1645年から90年にかけての10ドュカット金貨だろう。
これは直径46ミリと言う見事なもので、量目も35グラムを有している。
このコインは宗教的な意味を有しているのか、セント=ジョージと龍を表に、そして裏面には嵐の中を漂う小船を描く。
ともかく出来栄えがよく、マンスフェルト系のものと較べ問題にならない。
素晴らしい大型金貨と言える。
ドイツ・エッティンゲン=エッティンゲンの1624年と25年のターレル銀貨は表面の紋章の素晴らしいコインだが、この裏面がまたすごい。セント=ジョージの龍退治は、ハンガリーの10ドュカット金貨に匹敵する卓越した出来栄えを示している。
いずれにせよセント=ジョージの龍退治を描いたコインとしては、ハンガリーの10ドュカット金貨とこのエッティンゲン=エッティンゲンのターレル銀貨、それにザクセンの1671年と78年のターレル銀貨が傑作だと断言できる。
イギリスには類似したタイプのコインが見られる。これはエリザベス1世の治世下で発行されたエンジェル金貨で、1558年から93年にかけて存在した。ただし、ここに描かれているのはセント=ミカエル(マイケル)の龍退治となっている。
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